不倫か

 

あれはもう、ちょっと前。

 

当時はまだ、お酒に逃げていた。

 

14歳の頃。一生、逃げなくてはいけないことが起きる。

 

何度、入院を繰り返しても忘れることのできない、雪の山中。

 

18時間が過ぎ、だが、尿意は来ない。来ないようにされている。

 

24時間が経ち、私は元の中学生に戻った。

 

が、学校に行く気が起きず、三年になる頃には、

 

立派な不登校児童になっていた。

 

当時、仲良くなったのは大学生(左右問わず)や、

 

大型バイク乗りのミュージシャンなど。

 

それから三十年が過ぎ、私はあの頃、住んでいた下宿のそばの、

 

病院に強制入院させられた。お酒を飲みすぎたのだ。

 

「もう死なせてくれ」と言ったのを憶えている。

 

個室で手錠、足はベルトで絞められ、拘束されて入院。

 

翌朝、離脱症状も起きず、「先生、これ、外して」

 

と、冷静な声音で言えた。

 

お酒より、もっと強い向精神作用薬を経験している。

 

そして。担当ナースさんは相当の美人。

 

点滴を取り換えに来るたび、私は、

 

「だいぶ落ち着いてきたみたいです。アナタ、美人だから」

 

を繰り返した。彼女は、

 

「あはは。ありがとっ。でも、私、もう結婚しているからっ」

 

と笑って流してくれた。三日が過ぎ、

 

私は点滴内容に注文を付けた。

 

彼女はそれを主治医に告げてくれたのだと思う。

 

すぐに点滴内容が変わった。現行の栄養学で解る程度の、

 

スコア100のアミノ酸が足されたのだ。

 

まぁ、よし・・・と思っていたら、担当ナースさんが言った。

 

「点滴、変ったよ。貴方(私)の言う通りだって、先生が・・・」

 

医師を頂点にした医療界の順列は絶対だ。

 

担当と言えど、ナースが医師に提案するってことは、

 

勇気を振り絞らないといけない。

 

「ありがとっ」私は最初の彼女のように陽気に言った。

 

その肩に両手(ここが肝心)を添えて、彼女も、

 

「・・・ありがとう」を呟き、額を私の肩に、

 

そっと当てた。ほんの二秒間。私はみじろぎもしないで、

 

それを支えた。忙しいだろうに・・・。

 

私はそれを忘れない。もちろん、それ以上のことは無かった。

 

彼女は担当病棟を変わったのだろう、

 

それから、見えなくなった。あの手、あのぬくもりは忘れない。

 

あれは不倫だったのか? ふ。そんなことは無い。

 

無いに決まっている。

 

※※アミノ酸スコアは拙著で書いた。
また、本作をネットで検索していて、私の悪口が届いた方、
刑法の名誉棄損か侮辱罪、また不正アクセス防止法違反ですので、
最寄りの警察署に通報ください。法務局には報告してあります。
あなたのIPアドレスが探られているんですよ?
 準共犯要因もありますので、お気を付けて。


コピーライター・編集ライター・作家 元料理誌記者
肥満予防健康管理士 栄養学者 護憲論者 政治評論家
ヤフーチャット科学部屋・生物医学担当 音楽屋  江古田潤