アトピー
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私のワガママ。本作を書いているとき、
期待して待ってくれている友達も多かった。
が、私の答えは、一般受けするような作品にはならないよ、
だった。私の学歴は法学部中退。医学のイの字も無い。
そのせいで、こんな報道はおかしい、とか、
記者・編集者の理解不足とか、医学、薬学、科学全般に対して、
自分が発言力を持たないことを深く恥じ、
自費出版という非常事態を使って拙著・屁理屈屋を上梓した。
だからマスコミの暗部もいっぱい書けたし、それで嫌われるなら、
嫌われてもいい、の覚悟で書いた。後悔しているのは、
アラキドン酸カスケード。P252。アトピー体質の説明で、
この名を出してしまった。
アトピーなど自己免疫疾患などだけに関わる生体機能ではない。
シクロオキシナーゼ、トロンボキサン、プロスタグランジン、
いちおう端折って書いたが、心を病んでいる私の場合、
あの生体内物質も出したかった。が。
アトピーにこだわったのは、
期待して待ってくれている友人のなかに、
お子さんのアトピーで苦しんでいる男がいたからだ。
彼は肉食。ほとんど野菜を食べない。だから精子が病んでいるのだ、
と言う。そこまでわかっているのなら、ちゃんと食えよ、と、
中華料理屋に全員で行った際、
「生野菜と火の通った野菜、濃色野菜、淡色野菜、菌類、海藻類など、
ひと口ずつでもいいから、食べな。マネしてお子さんも食べるようになる。
自己免疫疾患は六歳過ぎて治ることが多いけど、まず食習慣を変えな!」
それを最後に彼とは会っていない。どうなったものやら、
私が心配することではない。ただ、どこの医者もすぐステロイド処方する、
あのせいでひどくなっている、との主張に、うーん、
ステロイドも単一の生理活性物質を指す言葉じゃないんだけど、
と思いながら、反論するのは主治医の役割で私ではない、と、
あえて何も言わなかった。本書の記述であるように、
確かに初期、ステロイド剤の使用基準が定まっていなかった。
今はどうだろうか? 定まったのは十五年ほど前だ。
医薬学の発展と、患者さんのご快癒を祈っている。
コピーライター・作家 医科学研究家 江古田潤