医療制度改革

拙著・屁理屈屋より


 認定医、専門医の称号はその医師が属する各専門学会の恣意的な

認定に過ぎない。必ずしも一定の水準を担保するものではない、と

いう報道は犀川も眼にしていた。

「かといって素人が勝手に医療機関のランク付けを行なうというの

も、妙な話です。人気イコール医学的評価ではありません。このた

めにも医師資格にも段階制度、更新制度を国で策定する必要があり

ます」
 
 そういって綾泉は足元に置いたカバンから、また新たなファイル

を取り出した。

「これもまだアイデア段階なのですが」
 
せわしなくページをめくり、開いたところを犀川とヨシダの前に

突き出した。
 
 普通医師免許5年更新制と更新試験制度の概要草案。
 
 1次医療における地域薬剤師の巡回診療と、希望者に内科限定医
 
 師資格試験の実施、および免許交付。
 
 実務10年以上、担当科3科目以上の看護師および内科限定医師
 
 による地域家庭医制度の充実。
 
 東洋医学分野の体系化と診療科目の細分化標榜。
 
 統合医免許を新設し、専門医認定3科以上かつ代替医療の現場経

験5年以上に、更新時に認定試験の受験資格。
 
 医療内部告発の保護制度。
 
 医療検察官の各地配置と医療ミスによる患者被害の迅速な保護。
 
 医局政治によらない人事の公的オンブズマン制度の創設。
 
 その他、項目は数十にものぼっていた。先ほどのファイルで犀川
 
がスキップした項目の、詳細ファイルのようだ。



拙著・屁理屈屋P233「密謀」より

手前味噌だが、この記載は役所のエライ人から褒められた。

が、某司法機関からは、今はちょっと・・・対応できない、

とのこと。だから、義務教育で医学教育が必要なのだ。

高校で理系、文系に分かれても、科学界、司法界に、

基礎医学の知識を持っている人たちが増える。

そうなれば不可能ではない。


コピーライター・作家 医科学評論家 政治評論家 江古田潤