コピーライターの自費出版2




拙著・屁理屈屋を出版社に入稿するため、

しかも予算の関係上、一冊にまとめたかったために割愛した部分が、

パソコンのあちこちに残っていて、筆者を悩ませる。

ただ拙著を読んだ方から、「修家君と織田さんの続編が読みたい!」との声が、

すでに十通以上、貰っている。

あ、確かに、修家≒科学者側、織田≒医者嫌い≒科学嫌いの確執は、

拙著の大きな構成となっている。ので、割愛した部分をブログに載せるので、

興味ある方は読んでほしい。私は次回作のガールズハードボイルドの急展開構成で、

毎日、悩んでいるのだ。では、以下。



 「修家と織田」第何章に入れたのか不明


※食品の科学的解釈
 
修家「この食品にはこれこれの物質が多く含まれています。
   それは体内でなになにという物質と結びつきやすく、
   それがあれそれを押さえる、またはあれそれの反応を進める、
   だから健康になれるのですね」という説明ですよね。

織田「体内で働く物質とそのメカニズムを説明している。それは科学的ではないのか」

修家「あの、たとえば米粒をひとつ、口にします。その米粒に含まれている成分のすべてが、
   体内で利用され、排出されるまでには最低でものべ数百回、
   最大だと数十万回の化学反応が起こるんです」

織田「……数十万回!?」

修家「ですから、冒頭のように食品中の一成分が特定の一反応を起こす、それだけ取り上げる時点で、
   もうダメです。科学に類似した思考法ではありますが、少なくとも医学的ではありません。
   百歩譲ったとしても、マルマルがバツバツと反応して、みたいな三段論法くずれのような説明は、
   まったく医学的ではありません。そういうのはたとえば、えっと」

織田「……」

修家「あの、戦隊ヒーローもののテレビってありましたよね?」

織田「え? ああ、変身戦隊ナナレンジャーとか、仮面警察ファイブスターとか」

修家「そうです。シリーズで20年近く続いています。それぞれのシリーズがだいたい26話くらいで、
   ぜんぶだと、えっと2~3000話以上あるはずです。で、ひとつひとつの話で、
   それぞれの複数のヒーローたちが各々活躍をして、事件を解決しますよね? 
   敵方の怪人もいろんなのが登場しますし、悪の組織の陰謀もその都度違います」

織田「……だからなんでオタク話になるんだよ」

修家「医学の話ですよ。マルマルが体内でバツバツという物質と結合して、っていう説明は、
   栄養と人体との関係を、いわば戦隊もののドラマすべてのシリーズを3行で説明したのと
   同じ程度なんです。
   悪の組織から送り込まれた怪人は、ヒーローたちの活躍と協力で打ち倒され、
   みんなの平和が守られました…… そのくらいのレベルなんです」


↑ この部分を割愛した。のだが、TVヒーローになぞらえて科学的解釈の説明をするなんて、

筆者くらいのものだ。科学に安易な妥協は不要とばかり、切り捨てられる。

拙著は、そうした一般出版社の編集者にいじられたくなくて、自費出版した。

担当編集者Y氏は、困ったような顔をしながら、なんとか割愛分を少なくするよう、

編集者魂を見せてくれた。なんだかんだで、郵貯の預金を取り崩したが、

周囲の人たちに言ったように、つれあいの支出は求めていない。

結果、一割ほどの出資を得たのだが、彼女の自主的な供出で、私の依頼ではない。

命がけ。そう、郵貯の生命保険の満期を待って出版した、

コピーライター、有料モノ書きの、悲願の一作である。




コピーライター・作家 医科学評論家 江古田潤