エコノミックアニマル

↓拙著・屁理屈屋P229「密謀」より

「米軍だけではありませんよ。相手国の将兵の治療にも全力を尽く
します」
「……!?」「……」
 
 犀川とヨシダは再び絶句した。綾泉のセリフは外気なみに冷えている。
なにか重たい確信があるようだった。
 
「そしてその医療費を世界に公表します。
ドル建てでいいでしょう。イージス艦の発信能力を転用してね。
リアルタイムにインターネットも使い、『〇〇戦における本日の総医療費』
と題して速報します。片方のだけ公表すると戦果推定につながってしまう。
あくまで両軍合計の数字のみを発表します。そして我が国はこういうんです」
 
タクシーが止まった。車上のハザードランプが、かすかにカチッ
カチッとリレー音を立てている。
 
「『ほら、戦争はこんなに馬鹿くさい。こんなに無駄なカネがかかりますよ』
ってね。かつてエコノミックアニマルと呼ばれた日本人の面目躍如でしょう?」
 
↑この部分は識者に褒められた。
あ、ちなみに先日「孤独」という題で、
ブログを書いたが、音楽関係の友人に癒された。だが。
 
モーツァルトだって、ショパンだって、先進的なことに挑戦したアーティストは、
既存勢力からメッタクソに叩かれ、それでも作り続けた。ま、頑張りな」
 
だって。うーん・・・。まさか自分が、
ショパンモーツァルトに例えられると思ってもいなかった。恥ずかしい。
 
確かにいろいろな文章表現上の挑戦はしたけれど。
本作はごくフツーの医学・法学・軍事・政治に満ちた、
エンターテイメント警察ミステリである。
 
 
 
コピーライター・作家 政治・軍事評論家
ヤフチャ科学部屋・生物医学担当 音楽屋  江古田潤